プロジェクト1.加害-被害関係の多角的研究
トラウマを主題としたこれまでの研究を発展的に継承します。児童虐待、犯罪、戦争などの問題、あるいはそれらの外傷性の作用を、「加害‐被害関係」という共通の問題構造でとらえ、個人間から国家間までの暴力が研究対象となります。したがって、研究の視点を、トラウマを抱える個人の「内面」だけでなく、暴力的作用を与える側と与えられる側の「相互関係」に当て、様々な領域における「被害/加害」現象の詳細な検討と、その関係を修復する方策の探究を目的としています。
プロジェクト趣旨
2期にわたる学術フロンティア研究事業において、「トラウマ」を主題とした研究活動を行ってきた。第1期においては、記憶と表象というトラウマ現象の核にある問題を幅広く学際的に論じること自体を目的とし、第2期においては、トラウマ現象における記憶の特殊な問題構造を、「埋葬と亡霊」という概念を用いて精神分析、臨床心理学、精神医学と、哲学、文学の人文科学が共有して論じる試みを行ってきた。 その過程で浮かび上がってきた事実は、トラウマが個人の内部で起こる、生理学的、心理学的過程であるだけでなく、暴力的作用を及ぼす主体と受ける主体の相互関係、すなわち加害と被害の関係の中で起こる現象としてとらえなければならないことであった。その構造は、犯罪、DV、児童虐待などのトラウマが問題となる主領域に共通する構造であり、そのもっとも大規模な現象はもちろん戦争、あるいは国際紛争である。 本研究は、トラウマを生み出す「加害‐被害」関係に焦点を当て、その現象の詳細の検証と、その関係を修復する方策の検討を目的とする。現在発生している「加害‐被害関係」を認識し、その関係を解消するという課題、加害者がいかに加害者であった(ある)のか、被害者がいかに被害者であった(ある)のかをそれぞれが自らの経験として認識する課題、内的な意味で加害者が加害者であることをやめ、被害者が被害者であることをやめる課題など、そこには重層的な複数の課題が含まれている。 本主題の具体的研究内容は、次の3つに分けられる。
第9回公開シンポジウム
心の危機と臨床の知
第9回公開シンポジウム「戦争体験の記憶と語り」


